「このままではお預かりできません」——入居して落ち着いたと思っていた矢先に、施設からこう告げられるご家族がいます。認知症の行動症状を理由にした退去の申し出です。突然のことで頭が真っ白になりますが、ここで焦って動くと、次の施設でも同じ理由でつまずく可能性があります。大阪で次の住まいを探すご家族に向けて、まず確認すべきこと、猶予期間の使い方、候補をどう絞るかを、順番どおりに整理します。
退去の申し出とは、施設側が「現在の人員・設備では安全にお預かりできない」と判断し、契約に基づいて退去を求めることです。多くの入居契約には、施設側から退去を求める場合の条件と予告期間が定められています。認知症の診断そのものが理由になることは通常なく、外に出て戻れない、他の入居者との間で危険な場面が続く、夜間の対応が体制を超える、といった具体的な行動が積み重なったときに起きます。
なぜ退去を求められるのか——「症状」ではなく「体制」の話
ご家族はここで「認知症が進んだから追い出される」と受け止めがちです。しかし施設側の判断は、いま起きている行動に、この施設の人員と構造で対応し続けられるかという一点にあります。退去を求められる典型的な場面は次の3つです。
- 夜間の対応が体制を超えた:夜間は職員が少なく、頻繫に起きて動く方への見守りが追いつかない
- 他の入居者への影響:他の方の部屋に入る、強い言葉や手が出るなど、安全面で切迫した場面が続く
- 建物の構造が合わない:出入口の管理ができない構造で、外に出て戻れないことが繰り返される
どれも「症状が重いから無理」ではなく「この施設の夜間人員では」「この建物の構造では」という条件つきの話です。条件が違う住まいなら対応できる可能性が残っています。断られる理由の全体像は老人ホームに断られる理由と、その後の探し方で整理しています。
最初に確認する3つのこと
感情が動く場面ですが、最初の数日で確認しておくと、その後の動きがまったく変わる項目があります。
| 確認すること | どこで・誰に | なぜ必要か |
|---|---|---|
| ① 契約書の退去条項と予告期間 | 入居時の契約書・重要事項説明書 | 「いつまでに」が決まらないと動けない |
| ② 退去を求める具体的な理由 | 施設の相談員・施設長に書面で | 次の施設に伝える条件になる |
| ③ 起きている行動の記録 | 介護記録・看護記録(開示を依頼) | 「いつ・何が・どのくらい」が次の受け入れ判断の材料になる |
③が見落とされがちです。「夜中に歩き回る」と口頭で伝わるのと、「深夜1時から3時の間に週4回、居室を出て他室の前で立ち止まる」と記録で伝わるのとでは、次の施設の判断が変わります。記録は、いまの施設にいる間に依頼しておくと集めやすくなります(退去後も保存期間内なら開示を求められる場合がありますが、時間がかかります)。

猶予期間は「記録を集める時間」に使う
予告期間が確認できたら、その期間を次の3つに使います。焦って見学を詰め込むより、材料を揃えるほうが結果的に早く決まります。
- 主治医への相談:行動症状が強い時期には、薬の調整や医療機関での評価が選択肢になることがあります(可否は主治医の判断)
- ケアマネジャーへの連絡:担当がいれば、次の住まい探しの窓口になります。いなければ地域包括支援センターへ
- 記録の整理:行動の種類・時間帯・頻度を1枚にまとめる。これが次の施設への「相談の入口」になります
※ 行動症状への医療的な対応の可否は、主治医と施設の協力医療機関の判断によります。この記事は入院や薬の調整を勧めるものではありません。
次の住まいの候補——行動の内容で絞る
次の住まいは「認知症に対応」という言葉ではなく、起きている行動に対して、どんな体制と構造を持っているかで絞ります。
| 起きている行動 | 見るべき体制・構造 |
|---|---|
| 外に出て戻れない | 出入口の管理方法、建物の構造(ユニット型・小規模など) |
| 夜間に頻繫に起きて動く | 夜間の職員配置、夜間看護の有無 |
| 他の入居者との摩擦 | 共用空間の作り、個別対応の余地、少人数の単位で暮らす構造か |
| 食べてはいけない物を口にする | 物品管理の仕組み、日中の見守り体制 |
認知症の方を前提にした住まいの種類(グループホーム、認知症対応に人員を厚くした住宅型など)の選び方は認知症の親の施設選びに、八尾市での探し方は八尾市の認知症の施設探しにまとめています。

動く順番
退去の申し出を受けてから次の入居までの、現実的な順番です。
- ① 契約書で期限を確定する(口頭ではなく書面で)
- ② 施設に理由の書面と記録の開示を依頼する
- ③ 主治医・ケアマネジャーに連絡し、記録を1枚に整理する
- ④ 行動の内容に合う体制の施設を複数当たり、「この記録で対応できるか」を先に聞く
- ⑤ 見学は候補を絞ってから(見学から始めると同じ理由で止まる)
ご家族が遠方の場合、①〜③は電話と書面で進められる部分が多くあります。私たちは大阪府内で施設をお探しする紹介サービスで、関連会社(株式会社3SMILE)が八尾市・枚方市で住宅型有料老人ホームを直営しています。行動の記録と期限を伺ったうえで、受け入れの可能性がある施設からお探しします。ご相談・見学同行は無料です。退院期限のある場合の動き方は退院を急かされたらも参考になります。
よくある質問
退去を求められたら、すぐに出なければいけませんか?
通常は契約書に退去までの予告期間が定められており、即日退去を求められることは一般的ではありません。まず契約書の該当条項を確認し、退去日がいつなのか、それまでの間の対応はどうなるのかを施設に書面で確認してください。
「他の入居者に迷惑がかかる」と言われました。仕方ないのでしょうか?
施設の人員体制で対応しきれない、という判断であることが多いです。ただし、それはその施設の体制の話であり、認知症の方を前提に人員や構造を整えた住まいであれば対応できることがあります。行動の内容と頻度を整理して、次の候補を探してください。
次の施設でも同じことになりませんか?
起きている行動が具体的に何で、どの時間帯に、どのくらいの頻度で起きているかを、いまの施設の記録から確認してください。それを次の施設に事前に伝えて「この内容で対応できるか」を先に聞くことで、同じ理由での退去を減らせます。
退去までの間に、いったん病院に入ることはできますか?
行動症状が強い時期には、医療機関での評価や治療が選択肢になることがあります。可否は主治医や施設の協力医療機関の判断によります。退去期限と入院の見通しを並べて、次の住まい探しの時間をどう確保するかを組み立ててください。
家族が遠方で、短期間で動けません。
退去期限の確認、施設への記録の依頼、次の候補探しは、ご家族が現地にいなくても進められる部分が多くあります。私たちがご本人の状態と期限を伺ったうえで、受け入れの可能性がある施設からお探しします。ご相談・見学同行は無料です。
- 退去の理由は「症状の重さ」ではなく「この施設の体制と構造」。条件が違う住まいなら対応できる可能性が残る
- 最初に確認するのは契約書の期限・理由の書面・行動の記録。記録はいまの施設にいる間しか集められない
- 次の住まいは行動の内容で絞り、見学の前に「この記録で対応できるか」を聞く
期限のある住まい探し、記録と一緒にご相談ください。
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大阪老人ホーム相談室


